現在世界中で取引されているコーヒー主に3つの原種があり、その中でも最も飲まれているのが「アラビカ種」です。その流通量はコーヒー全体の70~80%を占めています。
今回はコーヒー三大原種の一つアラビカ種の特徴や味わいなどを解説していきます。
アラビカ種とは

コーヒー三大原種の中でも最も流通量の多いアラビカ種ですが、その起源はカルディ伝説の地であるエチオピアのアムハル高原にあります。
【カルディ伝説とは】
カルディ伝説とはコーヒー発見にまつわる話です。
その昔、エチオピアのヤギ飼いカルディはある日ヤギの群れが赤い木の実を食べて飛び跳ねているのを目撃し、自らもその実を齧ると途端に元気になり気分爽快になったため、これを僧侶の元へ持参しました。
僧侶もこの実を食べその効果を体感し、自分の弟子にも食べさせると皆居眠りもせずに修行に取り組めるようになりました。このことからその修道院は“眠らない修道院”として一躍有名になり、コーヒーも魔法の薬として広がりました。
現在では自然交配や品種改良によって様々な亜種が存在しています。しかし、エチオピアの中部・西部には野生種も現存していますが、気候変動等の影響によって将来絶滅の可能性があると指摘されています。
アラビカ種のコーヒーノキはそのまま放っておくと高さ10mくらいまで成長しますが、コーヒー農園では収穫の効率を上げるために剪定されます。
アラビカ種の育成
アラビカ種のコーヒーは種を蒔いてから収穫までに3~4年程度の時間がかかります。
苗床に種を蒔いて1か月半~2か月で発芽し、約半年で50cm程まで成長します。それからこの苗木を農園に移し、収穫の効率を上げるために剪定をし2~3年後の雨季にコーヒーの花が咲きます。

この花は2・3日で枯れてしまいます。
この花が枯れると緑色の実が実り、半年程度でこの実が赤く色付き収穫期を迎えます。収穫時期は場所によって異なり、5~9月に収穫する地域や11月に収穫する地域があります。
一度コーヒー飲みが実るとそれから5~10年くらいの間が収穫のピークになり、それからは徐々に収穫量が減っていきます。
アラビカコーヒーの特徴
コーヒー豆は南回帰線と北回帰線の間、いわゆるコーヒーベルトと呼ばれる温かい地域で栽培されます。アラビカ種はその地域の中でも標高の高い地域(約1,500m前後)で作られており、コーヒー豆は昼夜の大きい気温差に晒されながら育っていきます。
このような環境ではコーヒー豆が固く締まるため、香りやコクが良く爽やかな酸味が特徴的なコーヒーに仕上がります。
このような反面、気温の変化にデリケートで害虫や病気に弱いといったデメリットも持ち合わせています。
アラビカ種の特徴
【良い点】
・香りがよく、コク・酸味にも優れる
【悪い点】
・栽培に手間がかかる
・害虫・病気などに弱い
アラビカ種の亜種
現在世界各国で栽培されているアラビカ種ですが、自然交配や変異によってその亜種がたくさん存在します。
アラビカ種の原産地は先述の通りエチオピアであり、現在でも中部や西部の標高1500m前後の雲霧林には野生種が現存しています。
・ティピカ種
ティピカ種は原種に最も近く最も古い品種です。現在栽培されているアラビカ種の多くはこのティピカ種から派生したものです。
豆はやや細長く、香り高く、甘みやクリーンな酸味があり、1967年までコロンビアはティピカ種100%で栽培されていましたが、さび病に弱く生産性も低いためその栽培は減ってきています。
しかし、その素晴らしい味わいが再評価され高級品として栽培されています。
【ティピカ種】
・最も古く原種に近い
・やや細長い豆
・香り・甘み・酸味が素晴らしい
・さび病に弱く、生産性も低い
・ブルボン種
ブルボン種はティピカ種と並ぶアラビカ種の2大品種です。
ブルボン種はイエメンからブルボン島(現レユニオン島)に移植されものが突然変異したものです。ブルボン種には「ブルボン・ロンド」とその突然変異種「ブルボン・ポワントゥ」があり、一般的なブルボン種はこのブルボン・ロンドを指します。
ブルボン・ポワントゥは豆・木・葉が尖った形をしいるためその名前が付けられました。豆は小粒で品質は高いものの生産性が低い為、次第に栽培されなくなってしまい、一時期は絶滅した品種と考えられていました。しかし1999年に当時UCCの川島良彰氏がブルボン島でブルボン・ポワントゥを発見し、見事ブルボン・ポワントゥは復活しました。
現在、ブルボン・ポワントゥは幻のコーヒーとしてUCCがその年に収穫されたものを数量限定で年末に販売しています。そのお値段150gで12,960円です!

ブルボン種(ブルボン・ロンド)は小粒で丸い形をしており、ティピカ種に比べると収穫量が2~3割ほど多いですが、隔年収穫(収穫量が年ごとに上下する)ため品種改良種には劣ります。さらに病気や害虫に弱いといったデメリットも挙げられます。
その味わいはコクに優れ、香りが良いと言われています。
【ブルボン種】
・小粒で丸みがある
・香り、コクが良い
・病気・害虫に弱い
・他の品種より収穫量が劣る
・カトゥーラ種
カトゥーラ種は1930年代にブラジルの南東部ミナスジェライス州のカトゥーラという町で発見されたブルボン種の突然変異種です。
因みにミナスジェライスは高品質のコーヒー産地としても有名であり、2019年には「スターバックス シングルオリジンシリーズ ブラジル ミナス ジェライス」が発売されました。

ブラジル ミナス ジェライス
豆は小粒で直射日光やさび病に強く品質も高いという特徴はありますが、栽培に手間がかかったり隔年収穫といった特徴もある品種です。
渋味と酸味が強いという特徴を持っています。
【カトゥーラ種】
・さび病や直射日光に強い
・栽培に手間がかかる
・渋みが強い
・良質な酸味がある
・スマトラ種
インドネシアのスマトラ島に持ち込まれたティピカ種を起源とする品種です。現在はインドネシアの有名銘柄『マンデリン』として広く取り扱われています。
コーヒー豆は大粒で長く丸い形をしており、スマトラ島で行われる独特の精製方法「スマトラ式」によって特徴的な味わいに仕上がります。
酸味は控えめで大地やハーブを思わせるとも表現される強いコクが特徴的です。
【スマトラ種】
・大粒で長く丸みを帯びた豆
・コクが強い
・酸味は少ない
・ムンド・ノーボ種
ムンド・ノーボ種は1943年にブラジル発見されたスマトラ種とブルボン種の自然交配種です。
ムンド・ノーボはポルトガル語で「新世界」という意味で、生豆は大粒で病気や環境適用力が強く安定した収穫量が望めますが、育成速度がやや遅く樹高も高いという面もあります。
この品種は香りやコクが強く、程よい甘み・苦み・酸味 バランスが非常に良く多くの人に受け入れられる味わいがあります。
【ムンド・ノーボ】
・病気に強い
・バランスの良い味わい
・樹高が高い